中原中也
宵に寢て、秋の夜中に目が覺めて / 汽車の汽笛の音(ね)を聞いた。
三富朽葉(くちば)よ、いまいづこ、 / 明治時代よ、人力も / 今はすたれて瓦斯燈は / 記憶の彼方に明滅す。
宵に寢て、秋の夜中に目が覺めて / 汽車の汽笛の音を聞いた。
亡き明治ではあるけれど / 豆電球をツトとぼし / 秋の夜中に天井を / みれば明治も甦る。
あゝ甦れ、甦れ、 / 今宵故人が風貌の / げになつかしいなつかしい。 / 死んだ明治も甦れ。
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