中原中也
風のたよりに、沖のこと 聞けば
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今夜は、可なり
しらじらと夜のあけそめに、
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漁船らは、沖を出發、
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歸つてきた、港の朝は、
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まぼろしの、帆柱だらけ
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雨風に、しらむだ
せはしげな、女の聲々、
あゝ、これでは、 / 人生は今も聞こゆる潮騷のごと、 / ねぼけづらなる潮騷のごと、 / うらがなしく、あつけない。
しかすがに、みよ、猟師の筋骨、 / 彼等は今晩も沖に出てゆく。 / そのために晝間は寢る。
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