中原中也
吹く風を心の友と / 口笛に心まぎらはし / 私がげんげ田を歩いてゐた十五の春は / 煙のやうに、野羊のやうに、パルプのやうに、
とんで行つて、もう今頃は、 / どこか遠い別の世界で花咲いてゐるであらうか / 耳を澄ますと / げんげの色のやうにはぢらひながら遠くに聞こえる
あれは、十五の春の遠い音信なのだらうか
/
それが何處か?――とにかく僕に其處へゆけたらなあ…… / 心一杯に懺悔して、 / 恕されたといふ氣持の中に、再び生きて、 / 僕は努力家にならうと思ふんだ――
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