中原中也
生きのこるものはづうづうしく、
/
死にゆくものはその清純さを漂はせ、
/
物云ひたげな瞳を
さて、今日はよいお天氣です。 / 街の片側は翳り、片側は日射しをうけて、あつたかい / けざやかにもわびしい秋の午前です。 / 空は昨日までの雨に拭はれて、すがすがしく、 / それは海の方まで續いてゐることが分ります。
その空をみながら、また街の中をみながら、 / 歩いてゆく私はもはや此の世のことを考へず、 / さりとて死んでいつたもののことも考へてはゐないのです。 / みたばかりの死に茫然として、 / 卑怯にも似た感情を抱いて私は歩いてゐたと告白せねばなりません。
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