中原中也
カワイラチイネ、 / おまへさんの鼻は、人間の鼻の模型だよ、 / ホ、笑つてら、てんでこつちが笑ふと、 / いよいよ尤もらしく笑ひ出す、おまへは / 俺の心を和げてくれるよ、ほんにさ、無性に和げてくれる、
その眼は大人つぽく、 / 橫顏は、なんだか世間を知つてるやうだ、 / おまへを俺がどんなに愛してゐるか、 / おまへは知らないけれど知つてるやうなもんだ。
ホ、また笑つてる、聲さへ立てて笑つてゐる、 / そのやうな笑ひを大人達は頓馬な笑ひだといふ。 / けれども俺は知つてゐる、 / 生れてきたことは嬉しいことなんだ / ただそれだけで既に十分嬉しいことなんだ
なんにもあせることなく、ただノオノオと、 / 生きてゐられる者があつたらそいつはほんとに偉いんだ、 / 俺は知つてゐる、おまへのやうに / 生きてゐるだけで既に嬉しい心を私は十分知つてゐる。
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