中原中也
七錢でバットを買つて、 / 一錢でマッチを買つて、 / ――ウレシイネ、 / 僕は次の峠を越えるまでに、 / バットは一と箱で足りると思つた。
山の中は暗くつて、 / 顏には蜘蛛の巣が一杯かかつた。 / 小さな月が出てゐるにはゐたが、 / それでも木の繁つた所は暗かつた。
ア、バアバアバアバ、 / 僕は赤ン坊の時したことを繰返した。 / 誰も通るものはなかつた。
暫くゆくと自轉車を坂の下に落として、 / 自分一人は草を摑めば上れるが、自轉車を置いとくわけにもいかず / といふ災難者にあつた。
自轉車に紐か何か付いてるでせう、と僕は云つた。 / へい、――それには全く氣が付きませんでした、
自轉車は月の光を浴びながら、 / ガタガタといつて引揚げられた。 (*)
――いつたい何處までゆきなさる、 / ――いえ、兄の嫁の危篤を知らせに、此の下の村まで一寸。
自轉車の前の、ランプが灯つた。――おとなしさうな男である。
僕は煙草に日を
アババババ、アババババ、
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