中原中也
南無 ダダ / 足駄なく、傘なく / 靑春は、降りこめられて、
水溜り、
人よ、人生は、騷然たる沛雨に似てゐる / 線香を、焚いて / 部屋にはゐるべきこと。
色町の女は愛嬌、 / この雨の、中でも挨拶をしてゐる / 靑い傘
植木鉢も流れ、 / 水盤も浮み、 / 池の鯉はみな、逃げてゆく
永遠に、雨の中、町外れ、出前持ちは猪突し、 / 私は、足駄なく傘なく、 / 玆、部屋の中に香を焚いて、 / チゥインガムも嚙みたくはない。
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