中原中也
私は今日郵便局のやうな、ガランとした所で遊んで來たい。それは今日のお午からが小春日和で、私が今欲してゐるものといつたらみたところ冷たさうな、板の厚い卓子と、シガーだけであるから。おおそれから、最も單純なことを、毎日繰返してゐる局員の橫顏!――それをしばらくみてゐたら、きつと私だつて「何かお手傳ひがあれば」と、一寸口からシガーを外して云つてみる位な氣輕な氣持になるだらう。局員がクスリと笑ひながら、でも忙しさうに、言葉をかけた私の方を見向きもしないで事務を取りつづけてゐたら、そしたら私は安心して自分の椅子に返つて來て、向うの壁の高いところにある、ストーブの煙突孔でも眺めながら、椅子の背にどつかと背中を押し付けて、二服ほどは特別ゆつくり吹かせばよいのである。
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すつかり好い氣持になつてる中に、日暮は近づくだらうし、ポケットのシガーも盡きよう。局員等の、機械的な表情も段々に薄らぐだらう。彼等の頭の中に
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