中原中也
かつて私は一切の「立脚點」だつた。 / かつて私は一切の解釋だつた。
私は不思議な共通接線に額して、 / 倫理の最後の點をみた。
(あゝ、それらの美しい論法の一つ一つを、 / いかにいまこゝに想起したいことか!)
*
その日私はお道化る子供だつた。 / 卑小な希望達の仲間となり馬鹿笑ひをつゞけてゐた。
(いかにその日の私の見窄しかつたことか! / いかにその日の私の神聖だつたことか!)
*
私は完き從順の中に / わづかに呼吸を見出だしてゐた。
私は
*
これらの忘恩な生活の罰か? はたしてさうか?
/
私は今日、統覺作用の
さうだ、私は十一月の曇り日の墓地を歩いてゐた、 / 柊の葉をみながら私は歩いてゐた。
その時私は何か?たしかに失つた。
*
今では私は / 生命の動力學にしかすぎない―― / 自恃をもつて私は、むづかる特權を感じます。
かくて私には歌がのこつた。 / たつた一つ、歌といふのがのこつた。
*
私の歌を聽いてくれ。
http://www.junkwork.net/txt