中原中也
われ星に甘え、われ太陽に傲岸ならん時、人々自らを死物と觀念してあらんことを! われは御身等を呪ふ。 / 心は腐れ、器物は穢れぬ。「夕暮」なき競走、油と蟲となる理想! ――言葉は既に無益なるのみ。われは世界の壞滅を願ふ! / 蜂の尾と、ラム酒とに、世界は分解されしなり。夢のうちなる遠近法、夏の夜風の小鎚の重量、それ等は既になし。 / 陣營の野に笑へる陽炎、空を匿して笑へる齒、――おゝ古代!――心は寧ろ笛にまで、墮落すべきなり。 / 家族旅行と木箱との過剩は最早、世界をして理知にて笑はしめ、感情にて判斷せしむるなり。――われは世界の壞滅を願ふ! / マグデブルグの半球よ、おゝレトルトよ! 汝等祝福されてあるべきなり、其の他はすべて分解しければ。 / マグデブルグの半球よ、おゝレトルトよ! われ星に甘え、われ太陽に傲岸ならん時、汝等ぞ、讚ふべきわが從者!
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