中原中也
外燈に誘出された長い板塀、 / 人々は影を連れて歩く。
星の子供は聲をかぎりに、 / たゞよふ靄をコロイドとする。
亡國に來て元氣になつた、 / この洟色の目の婦(をんな)、 / 今夜こそ心もない、魂もない。
鋪道の上には勇ましく、 / 黄銅の胸像が歩いて行つた。
私は沈默から紫がかつた、 / 數箇の苺を受けとつた。
ガリラヤの湖にしたりながら、 / 天子は自分の胯を裂いて、 / ずたずたに甘えてすべてを呪つた。
http://www.junkwork.net/txt