中原中也
あゝ、秋が來た / 眼に琺瑯の涙沁む。 / あゝ、秋が來た / 胸に舞踏の終らぬうちに / もうまた秋が、おぢやつたおぢやつた。 / 野邊を 野邊を 畑を 町を / 人達を蹂躙に秋がおぢやつた。
その着る着物は寒冷紗 / 兩手の先には 輕く冷い銀の玉 / 薄い横皺平らなお顏で / 笑へば籾殻かしやかしやと、 / へちまのやうにかすかすの / 惡魔の伯父さん、おぢやつたおぢやつた。
(一九二五・一〇・七)
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