中原中也
千の華燈よりとほくはなれ、 / 笑める巷よりとほくはなれ、 / 露じめる夜のかぐろき空に、 / かの女はうたふ。
「月汞はなし、 / 低聲(こごゑ)誇りし男は死せり。 / 皮肉によりて瀆されたりし、 / 生よ歡喜よ!」かの女はうたふ。
欝悒のほか訴ふるなき、 / 翁よいましかの女を抱け。 / 自覺なかりしことによりて、
いたましかりし純美の心よ。 / かの女よ憔(じ)らせ、狂ひ、踊れ、 / 汝(なれ)こそはげに、太陽となる!
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