亡き兒文也の靈に捧ぐ
中原中也
ある朝 僕は 空の 中に、 / 黑い 旗が はためくを 見た。 / はたはた それは はためいて ゐたが、 / 音は きこえぬ 高きが ゆゑに。
手繰り 下ろさうと 僕は したが、
/
綱も なければ それも 叶はず、
/
旗は はたはた はためく ばかり、
/
空の
かゝる
かの時 この時 時は 隔つれ、 / 此處と 彼處と 所は 異れ、 / はたはた はたはた み空に ひとり、 / いまも 渝らぬ かの 黑旗よ。
http://www.junkwork.net/txt