在りし日の歌

亡き兒文也の靈に捧ぐ

中原中也

在りし日の歌

除夜の鐘

除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。 / 千萬年も、古びたよるの空氣を顫はし、 / 除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。

それは寺院の森の霧つた空…… / そのあたりで鳴つて、そしてそこから響いて來る。 / それは寺院の森の霧つた空……

その時子供は父母の膝下で蕎麥を食うべ、 / その時銀座はいつぱいの人出、淺草もいつぱいの人出、 / その時子供は父母の膝下で蕎麥を食うべ。

その時銀座はいつぱいの人出、淺草もいつぱいの人出。 / その時囚人は、どんな心持だらう、どんな心持だらう、 / その時銀座はいつぱいの人出、淺草もいつぱいの人出。

除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。 / 千萬年も、古びたよるの空氣を顫はし、 / 除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。

目次

在りし日の歌

  1. 在りし日の歌
  2. 永訣の秋

在りし日の歌

  1. 含 羞
  2. むなしさ
  3. 夜更の雨
  4. 早春の風
  5. 靑い瞳
    1. 夏の朝
    2. 冬の朝
  6. 三歳の記憶
  7. 六月の雨
  8. 雨の日
  9. 春の日の歌
  10. 夏の夜
  11. 幼獸の歌
  12. この小兒
  13. 冬の日の記憶
  14. 秋の日
  15. 冷たい夜
  16. 冬の明け方
  17. 老いたる者をして
  18. 湖 上
  19. 冬の夜
  20. 秋の消息
  21. 秋日狂亂
  22. 朝鮮女
  23. 夏の夜に覺めてみた夢
  24. 春と赤ン坊
  25. 雲 雀
  26. 初夏の夜
  27. 北の海
  28. 頑是ない歌
  29. 閑 寂
  30. お道化うた
  31. 思ひ出
  32. 殘 暑
  33. 除夜の鐘
  34. 雪の賦
  35. わが半生
  36. 獨身者
  37. 春宵感懷
  38. 曇 天
  39. 蜻蛉に寄す

このファイルについて

底本
中原中也「中原中也全集 第 1 巻」角川書店
1967 年 10 月 20 日 初版發行
1967 年 11 月 30 日 三版發行
中原中也「中原中也全集 第 2 巻」角川書店
1967 年 11 月 20 日 印刷發行
入力
イソムラ
2004-03-31T16:50:45+09:00 公開
2010-02-19T12:05:00+09:00 追加・修正
概要
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