在りし日の歌

亡き兒文也の靈に捧ぐ

中原中也

在りし日の歌

湖 上

ポツカリ月が出ましたら、 / 舟を浮べて出掛けませう。 / 波はヒタヒタ打つでせう、 / 風も少しはあるでせう。

沖に出たらば暗いでせう、 / 櫂から滴垂したゝる水の音は / 昵懇ちかしいものに聞えませう、 / ――あなたの言葉の杜切れ間を。

月は聽き耳立てるでせう、 / すこしは降りても來るでせう、 / われら接唇くちづけする時に / 月は頭上にあるでせう。

あなたはなほも、語るでせう、 / よしないことや拗言すねごとや、 / 洩らさず私は聽くでせう、 / ――けれど漕ぐ手はやめないで。

ポツカリ月が出ましたら、 / 舟を浮べて出掛けませう、 / 波はヒタヒタ打つでせう、 / 風も少しはあるでせう。

目次

在りし日の歌

  1. 在りし日の歌
  2. 永訣の秋

在りし日の歌

  1. 含 羞
  2. むなしさ
  3. 夜更の雨
  4. 早春の風
  5. 靑い瞳
    1. 夏の朝
    2. 冬の朝
  6. 三歳の記憶
  7. 六月の雨
  8. 雨の日
  9. 春の日の歌
  10. 夏の夜
  11. 幼獸の歌
  12. この小兒
  13. 冬の日の記憶
  14. 秋の日
  15. 冷たい夜
  16. 冬の明け方
  17. 老いたる者をして
  18. 湖 上
  19. 冬の夜
  20. 秋の消息
  21. 秋日狂亂
  22. 朝鮮女
  23. 夏の夜に覺めてみた夢
  24. 春と赤ン坊
  25. 雲 雀
  26. 初夏の夜
  27. 北の海
  28. 頑是ない歌
  29. 閑 寂
  30. お道化うた
  31. 思ひ出
  32. 殘 暑
  33. 除夜の鐘
  34. 雪の賦
  35. わが半生
  36. 獨身者
  37. 春宵感懷
  38. 曇 天
  39. 蜻蛉に寄す

このファイルについて

底本
中原中也「中原中也全集 第 1 巻」角川書店
1967 年 10 月 20 日 初版發行
1967 年 11 月 30 日 三版發行
中原中也「中原中也全集 第 2 巻」角川書店
1967 年 11 月 20 日 印刷發行
入力
イソムラ
2004-03-31T16:50:45+09:00 公開
2010-02-19T12:05:00+09:00 追加・修正
概要
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