亡き兒文也の靈に捧ぐ
中原中也
月の光のそのことを、
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霧の降つたる秋の夜に、 / 庭・石段に腰掛けて、 / 月の光を浴びながら、 / 二人、默つてゐたけれど、 / やがてピアノの部屋に入り、 / 泣かんばかりに彈き出した、 / あれは、シュバちやんではなかつたらうか?
かすむ街の灯とほに見て、
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ウヰンの
シュバちやんかベトちやんか、
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そんなこと、いざ知らね、
/
今宵星降る東京の
ベトちやんもシュバちやんも、はやとほに死に、 / はやとほに死んだことさへ、 / 誰知らうことわりもない……
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