亡き兒文也の靈に捧ぐ
中原中也
麻は朝、人の肌(はだへ)に追ひ縋(すが)り / 雀らの、聲も硬うはなりました / 煙突の、煙は風に亂れ散り
火山掘れば氷のある如く / けざやけき顥氣の底に靑空は / 冷たく沈み、しみじみと
敎會堂の石段に / 日向ぼつこをしてあれば / 陽光(ひかり)に廻(めぐ)る花々や / 物蔭に、すずろすだける蟲の音(ね)や
秋の日は、からだに暖か / 手や足に、ひえびえとして / 此の日頃、廣告氣球は新宿の / 空に揚りて漂へり
http://www.junkwork.net/txt