亡き兒文也の靈に捧ぐ
中原中也
かなしい心に夜が明けた、 / うれしい心に夜が明けた、 / いいや、これはどうしたといふのだ? / さてもかなしい夜の明けだ!
靑い瞳は動かなかつた、 / 世界はまだみな眠つてゐた、 / さうして『その時』は過ぎつつあつた、 / あゝ、遐い遐いい話。
靑い瞳は動かなかつた、 / ――いまは動いてゐるかもしれない…… / 靑い瞳は動かなかつた、 / いたいたしくて美しかつた!
私はいまは此處にゐる、黄色い灯影に。 / あれからどうなつたのかしらない…… / あゝ、『あの時』はあゝして過ぎつゝあつた! / 碧い、噴き出す蒸氣のやうに。
それからそれがどうなつたのか……
/
それは僕には分らなかつた
/
とにかく朝霧罩めた飛行場から
/
機影はもう永遠に消え去つてゐた。
/
あとには殘酷な砂礫だの、雜草だの
/
頰を
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