中原中也
こんなにフケが落ちる、 / 秋の夜に、雨の音は / トタン屋根の上でしてゐる…… / お道化てゐるな―― / しかしあんまり哀しすぎる。
犬が吠える、蟲が鳴く、 / 畜生! おまへ達には社交界も世間も、 / ないだろ。着物一枚持たずに、 / 俺も生きてみたいんだよ。
吠えるなら吠えろ、 / 鳴くなら鳴け、 / 目に涙を湛へて俺は仰臥さ。 / さて、俺は何時死ぬるのか、明日か明後日か…… / ――やい、豚、寢ろ!
こんなにフケが落ちる、 / 秋の夜に、雨の音は / トタン屋根の上でしてゐる。 / なんだかお道化てゐるな / しかしあんまり哀しすぎる。
この穢れた涙に汚れて、 / 今日も一日、過ごしたんだ。
暗い冬の日が梁や壁を搾めつけるやうに、 / 私も搾められてゐるんだ。
赤ン坊の泣聲や、おひきずりの靴の音や、
/
昆布や
みんなみんな、街頭沿ひの電線の方へ / 荷馬車の音も耳に入らずに、舞ひ颺り舞ひ颺り
吁! はたして昨日が
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