未刊詩篇

中原中也

〔一九二八年-一九二九年〕

幼年囚の歌

1

こんなに酷く後悔する自分を、 / それでも人は、苛めなければならないのか? / でもそれは、苛めるわけではないのか? / さうせざるを得ないといふのか?

人よ、君達は私の弱さを知らなさすぎる。 / 夜も眠れずに、自らを嘆くこの男を、 / 君達は知らないのだ、嘆きのために、 / 果物にもパンにももう飽かしめられたこの男を。

君達は知らないのだ、神のほか、地上にはもうよるべのない、 / 冬の夜は夜空のもとに目も耳もないこの悲しみを。 / それにしてもと私は思ふ、

この明瞭なことが、どうして君達には見えないのだらう? / どうしてだ?どうしてだ? / 君達は、自疑してるのだと私は思ふ……

2

今夜こよはまた、かくて呻吟するものを、 / 明日の日は、また罪犯す吾なるぞ。 / かくて幾たび幾そたび繰返すとも悟らぬは、 / いかなる呪ひのためならむ。

かくは烈しく呻吟し / かくは間なくし罪つくる。 / 繰返せども返せども、 / つねに新し、たびたびに。

かくは烈しく呻吟し、 / などてはまたも繰返す? / かくはたびたび繰返し、 / などては進みもなきものか?

われとわが身にあらそへば / 人の喜び、悲しみも、 / ゼラチン透かし見るごとく / かなしくもまたおどけたり。

(一九二九・一・四)

目次

未刊詩篇

  1. 〔一九二〇年-一九二三年〕
  2. 〔一九二三年-一九二八年〕
  3. 〔一九二八年-一九二九年〕
  4. 〔一九三〇年-一九三二年〕
  5. 〔一九三三年-一九三四年〕
  6. 〔一九三五年-一九三七年〕

〔一九二八年-一九二九年〕

  1. 女よ
  2. 幼年囚の歌
  3. 寒い夜の自我像(2・3)
  4. 冷酷の歌
  5. 雪が降つてゐる……
  6. 身過ぎ
  7. 倦怠(倦怠の谷間に落つる)
  8. 夏は靑い空に……
  9. 夏の海
  10. 頌 歌
  11. 追 懷
  12. 浮 浪
  13. 暗い天候(二・三)
  14. 嘘つきに
  15. 我が祈り

このファイルについて

底本
中原中也「中原中也全集 第 1 巻」角川書店
1967 年 10 月 20 日 初版發行
1967 年 11 月 30 日 三版發行
中原中也「中原中也全集 第 2 巻」角川書店
1967 年 11 月 20 日 印刷發行
入力
イソムラ
2004-03-31T16:50:45+09:00 公開
2010-02-19T12:05:00+09:00 追加・修正
概要
底本を元に HTML 形式への変換を行っています。XHTML 1.1 と CSS 2 を使用しています。
ひらがな・カタカナなど基本的に底本のまま入力していますが(末黑野、未刊詩篇のカタカナ繰り返し記号 (*) を除く)、漢字はMS Pゴシック(MS PGothic)及びMS P明朝(MS PMincho)に含まれていないものはいわゆる新字に変換しています。

http://www.junkwork.net/txt