中原中也
女よ、美しいものよ、私の許にやつておいでよ。 / 笑ひでもせよ、嘆きでも、愛らしいものよ。 / 妙に大人ぶるかと思ふと、すぐまた子供になつてしまふ / 女よ、そのくだらない可愛いい夢のままに、 / 私の許にやつておいで。嘆きでも、笑ひでもせよ。
どんなに私がおまへを愛すか、 / それはおまへにわかりはしない。けれどもだ、 / さあ、やつておいでよ、奇麗な無知よ、 / おまへにわからぬ私の悲愁は、 / おまへを愛すに、かへつてすばらしいこまやかさとはなるのです。
さて、そのこまやかさが何處からくるともしらないおまへは、
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欣び甘え、しばらくは、仔猫のやうにも
(一九二八・一二・十八)
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