未刊詩篇

中原中也

〔一九二八年-一九二九年〕

身過ぎ

面白半分や、企略たくらみで、 / 世の中は瀨戸物の音をたてては喜ぶ。 / 躁ぎすぎたり、悄氣すぎたり、 / さても世の中は骨の折れることだ。

誰も彼もが不幸で、 / ただ澄ましてゐるのと騷いでゐるのとの違ひだ。 / その辛さ加減はおんなしで、 / 羨みあふがものはないのだ。

さてそこで私は瞑想や籠居や信義を發明したが、 / 瞑想はいつでも續いてゐるものではなし、 / 籠居は空つぽだし、私は信義するのだが / 相手のほうが不信義で、やつぱりそれも駄目なんだ。

かくて無抵抗となり、ただ眞實を愛し、 / 浮世のことを恐れなければよいのだが、 / あだな女をまだ忘れ得ず、えエいつそ死なうかなぞと / 思つたりする――それもふざけだ。辛い辛い。

目次

未刊詩篇

  1. 〔一九二〇年-一九二三年〕
  2. 〔一九二三年-一九二八年〕
  3. 〔一九二八年-一九二九年〕
  4. 〔一九三〇年-一九三二年〕
  5. 〔一九三三年-一九三四年〕
  6. 〔一九三五年-一九三七年〕

〔一九二八年-一九二九年〕

  1. 女よ
  2. 幼年囚の歌
  3. 寒い夜の自我像(2・3)
  4. 冷酷の歌
  5. 雪が降つてゐる……
  6. 身過ぎ
  7. 倦怠(倦怠の谷間に落つる)
  8. 夏は靑い空に……
  9. 夏の海
  10. 頌 歌
  11. 追 懷
  12. 浮 浪
  13. 暗い天候(二・三)
  14. 嘘つきに
  15. 我が祈り

このファイルについて

底本
中原中也「中原中也全集 第 1 巻」角川書店
1967 年 10 月 20 日 初版發行
1967 年 11 月 30 日 三版發行
中原中也「中原中也全集 第 2 巻」角川書店
1967 年 11 月 20 日 印刷發行
入力
イソムラ
2004-03-31T16:50:45+09:00 公開
2010-02-19T12:05:00+09:00 追加・修正
概要
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