亡き兒文也の靈に捧ぐ
中原中也
洋行歸りのその洒落者は、
/
夜毎喫茶店にあらはれて、
/
其處の主人と話してゐる
死んだと聞いてはいつそうあはれであつた。
――幻滅は
髪毛の
剃りたての、
開け放たれた戸口から / 悔恨は、風と一緒に容赦なく / 吹込んでゐた。
讀書も、しむみりした戀も、
/
暖かいお茶も
彼女は
/
壁の中へ這入つてしまつた。
/
それで彼は獨り、
/
部屋で
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