在りし日の歌

亡き兒文也の靈に捧ぐ

中原中也

永訣の秋

一つのメルヘン

秋の夜は、はるかの彼方に、 / 小石ばかりの、河原があつて、 / それに陽は、さらさらと / さらさらと射してゐるのでありました。

陽といつても、まるで硅石か何かのやうで、 / 非常な個體の粉末のやうで、 / さればこそ、さらさらと / かすかな音を立ててもゐるのでした。

さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、 / 淡い、それでゐてくつきりとした / 影を落としてゐるのでした。

やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、 / 今迄流れてもゐなかつた川床に、水は / さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました……

目次

在りし日の歌

  1. 在りし日の歌
  2. 永訣の秋

永訣の秋

  1. ゆきてかへらぬ
  2. 一つのメルヘン
  3. 幻 影
  4. あばずれ女の亭主が歌つた
  5. 言葉なき歌
  6. 月夜の濱邊
  7. また來ん春……
  8. 月の光 その一
  9. 月の光 その二
  10. 村の時計
  11. 或る男の肖像
  12. 冬の長門峽
  13. 米 子
  14. 正 午
  15. 春日狂想
  16. 蛙 聲
  17. 後 記

このファイルについて

底本
中原中也「中原中也全集 第 1 巻」角川書店
1967 年 10 月 20 日 初版發行
1967 年 11 月 30 日 三版發行
中原中也「中原中也全集 第 2 巻」角川書店
1967 年 11 月 20 日 印刷發行
入力
イソムラ
2004-03-31T16:50:45+09:00 公開
2010-02-19T12:05:00+09:00 追加・修正
概要
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