山羊の歌

中原中也

少年時

少年時

あをぐろい石に夏の日が照りつけ、 / 庭の地面が、朱色に睡つてゐた。

地平の果に蒸氣が立つて、 / 世の亡ぶ、きざしのやうだつた。

麥田には風が低く打ち、 / おぼろで、灰色だつた。

翔びゆく雲の落とす影のやうに、 / 他のを過ぎる、昔の巨人の姿――

夏の日のひる過ぎ時刻 / 誰彼の午睡ひるねするとき、 / 私は野原を走つて行つた……

私は希望を唇に嚙みつぶして / 私はギロギロする目で諦めてゐた…… / 噫、生きてゐた、私は生きてゐた!

目次

山羊の歌

  1. 初期詩篇
  2. 少年時
  3. みちこ
  4. 羊の歌

少年時

  1. 少年時
  2. 盲目の秋
  3. わが喫煙
  4. 妹 よ
  5. 寒い夜の自画像
  6. 木 蔭
  7. 失せし希望
  8. 心 象

このファイルについて

底本
中原中也「中原中也全集 第 1 巻」角川書店
1967 年 10 月 20 日 初版發行
1967 年 11 月 30 日 三版發行
中原中也「中原中也全集 第 2 巻」角川書店
1967 年 11 月 20 日 印刷發行
入力
イソムラ
2004-03-31T16:50:45+09:00 公開
2010-02-19T12:05:00+09:00 追加・修正
概要
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