中原中也
河上徹太郎に
ためいきは夜の沼にゆき、 / 瘴氣の中で瞬きをするであらう。 / その瞬きは怨めしさうにながれながら、パチンと音を立てるだらう。 / 木々が若い學者仲間の、頸すぢのやうであるだらう。
世が明けたら地平線に、窓が
野原に突出た山ノ端の松が、私を看守つてゐるだらう。
/
それはあつさりしてても笑はない、叔父さんのやうであるだらう。
/
神様が氣層の底の、
空が曇つたら、蝗螽の瞳が、砂土の中に覗くだらう。 / 遠くに町が、石灰みたいだ。 / ピョートル大帝の目玉が、雲の中で光つてゐる。
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