中原中也
こんな朝、遲く目覺める人達は / 戸にあたる風と轍との音によつて、 / サイレンの棲む海に溺れる。
夏の夜の露天の會話と、 / 建築家の良心はもうない。 / あらゆるものは古代歴史と / 花崗岩のかなたの地平の目の色。
今朝はすべてが領事館旗のもとに從順で、 / 私は錫と廣場と天鼓のほかのなんにも知らない。 / 軟體動物のしやがれ聲にも氣をとめないで、 / 紫の蹲んだ影して公園で、乳兒は口に砂を入れる。
(水色のプラットホームと
/
躁ぐ少女と
ぽけっとに手を突込んで
/
路次を拔け、波止場に出でて
/
今日の日の魂に合ふ
/
http://www.junkwork.net/txt