1. monologue
  2. Other Stories
  3. チャイルドメイカー
  4. 幸せへ向けて

チャイルドメイカー

  1. 出会い、始まり
  2. セットアップ
  3. 現実的な
  4. 宅配便
  5. 助言
  6. 代償
  7. 電話の声
  8. 終わりの始まり
  9. おかしな噂
  10. 隠し事
  11. 忠告
  12. 幸せへ向けて
  13. 真相

幸せへ向けて

「ただいまぁ」

すっかり暗くなった頃にようやく家に着いて、誰もいない部屋に呼びかける。大きく息をついて、玄関に座り込む。頭を左右に振りながら。

「やればできるじゃないか、素敵な父親じゃないか」

少し口元の緩んだ顔で、自分自身に呼びかける。今日亜理紗と妻と会ったことは、きっと僕の今後の生活を幸せな方向へ向けるに違いない。今日一日、素敵な父親でいた僕と、優しい母親でいた妻。無邪気にはしゃぐ、まだ幼い娘。絵に描いたような円満な家庭だったじゃないか。

「きっとうまくいく、きっと。今日うまくいったんなら明日もうまくいく」

いつになるかはわからないけれど、きっと妻は僕にこう言うはずだ。娘を連れて飛び出したのは軽率だった、もう一度やり直したい……と。冷蔵庫を開けて、ウィスキーの小ビンを取り出す。

「明日もうまくいったなら、これから、ずっとずっとうまくいく」

小さくつぶやきながらコップを探す。

「あれ、ないな……今日はストレートでもいいか」

直接ビンに口をつけ、一口、二口とウィスキーを流し込む。辛いときは喉の奥に染みるが、今日は胃の底を刺激して、僕の気持ちを高揚させた。

「……っ効くなぁ」

少しフラフラになりながら、パソコンに向かう。今日あったことと話したことをどこかに書き留めておこう。

「昼食、話し合い、亜理紗の希望で遊園地……」

口にしながら次々と入力して、思い出しながらにやけ顔になる。

「夕飯、ホテルのロビー、眠る亜理紗を抱きかかえる妻との話し合い……」

そして、次に会うことの約束もした。今の僕の生活の状況によっては、これから一緒に暮らすことも考ていく、とも言った。

「明日は希望に満ち溢れている、と」

陳腐なセリフで締めて、今日の記録は終わり。

「おっと、メールチェック……ん?」

今朝方、僕が家を出た直後に届いたメールだった。件名は『未来のパパへ』となっている。偽装されているのか、差出人は不明。

「何だこれ?」

何か新しいタイプの広告か、それとも質の悪いいたずらか。酔ってフラフラになった僕の頭で思いつくのはそれくらいだった。

To Be Continued