1. monologue
  2. Other Stories
  3. チャイルドメイカー
  4. 終わりの始まり

チャイルドメイカー

  1. 出会い、始まり
  2. セットアップ
  3. 現実的な
  4. 宅配便
  5. 助言
  6. 代償
  7. 電話の声
  8. 終わりの始まり
  9. おかしな噂
  10. 隠し事
  11. 忠告
  12. 幸せへ向けて
  13. 真相

終わりの始まり

妻からの電話は思ったより早くて、翌日の夜にはいろんな計画を話された。

「やっぱり、亜理紗にも男親が必要なんじゃないかって思うの」

なぜか彼女は弱気らしく、懇願するような話し方さえした。僕は、そうだろう僕がいなきゃダメだろう、と言いたくて仕方がないのをずっとこらえていた。

「それで、話し合いをするのはいつがいいんだい?」
「できれば今週末にでも……ダメかしら? また仕事?」
「いや、なんとか……その日は空けれるように」

背広の上着から取り出した手帳とにらめっこして、今入っているスケジュールをどう動かすか、と頭をフル回転させる。

「これは接待だから……山崎に頼めば……」
「やっぱり、都合悪いかしら?」
「いやそんなことない、全然、心配しなくていい」

しどろもどろになりながらなんとか話をつけて、そのまま会社の同僚に電話をかける。

「あーもしもし、村井だけど、実はちょっと頼みたいことが……」

思いのほか交渉はスムーズにいって、僕は週末に一大チャンスを得ることができた。布団に顔をうずめて喜びを噛みしめていると、パソコンの電源が入った気配がした。なんだまた "アリス" か、とつぶやきながら画面の前に座る。ベッドからパソコンに近付くまで、僕は "アリス" の荷物にニ回足をひっかけた。

『どうかしたかい、何か足りないものでも?』
『誰からの電話だったの?』

ああまたかちくしょう、電話の電波に反応したな。独占欲の強い女に見張られているみたいで、気味というより気分が悪い。

『仕事の電話だよ、お前には関係ないことだ』
『でも、他の仕事の電話よりずっとずっと長かったわ』
「このっ……!」

なんてことだ、いちいちそんなことまで確認してるのか。どうにかして設定をいじって、勝手にパソコンを起動しないようにできないんだろうか。

『アリス、たまには電話も何も気にしないでゆっくりしたらどうなんだ』
『でもパパ、アリスはいつも一緒にいたいの』
『いつでも側にいるから、第一、大人の会話に子供が口出すものじゃない』

そう入力すると "アリス" は申し訳なさそうな顔をして、「ごめんなさい」と言って眠りについた。こんな表情も見せるのか、と僕は改めて感心した。

「そうだ、亜理紗が戻ってくるなら、もうこのゲームは」

僕はそうつぶやいて部屋の中を見回した。 "アリス" の荷物があふれ返りそうで、小さくため息をついた。そうだ、亜理紗が戻ってくるなら、このゲームはもういらないだろう。

To Be Continued