1. monologue
  2. Other Stories
  3. チャイルドメイカー
  4. 忠告

チャイルドメイカー

  1. 出会い、始まり
  2. セットアップ
  3. 現実的な
  4. 宅配便
  5. 助言
  6. 代償
  7. 電話の声
  8. 終わりの始まり
  9. おかしな噂
  10. 隠し事
  11. 忠告
  12. 幸せへ向けて
  13. 真相

忠告

約束のその日はよく晴れていて、浮かれ気味の僕の気分をさらに持ち上げた。朝起きて空を見上げて、それだけで軽く笑顔になってしまうくらいだった。

「久しぶりに亜理紗に会える……久しぶりに」

はやる気持ちを押さえつけて、新聞を読みながら朝食を食べる。目は記事を追ってはいるが、頭の中には一切入っていない。景気の指標がどうだとか、外交政策の意見がどうだとか、最大手の企業がどうだとか。今の僕にしてみればどれもこれも小さな問題だ。

「メールチェック、と」

パソコンを起動して、メールが来ていないかの確認。毎朝の僕の習慣だ。

「メールマガジン二件、メーリングリスト一件、ダイレクトメールに……誰だこれ?」

見慣れない送り主から、『緊急!』という件名でメールが来ていた。これもダイレクトメールの一種だろう、と踏んでささっと削除……しようとして気がつく。

「あれ、奈良崎じゃないか?」

アドレスの一部に「narasaki」と入っている。芸のないやつだ。フリーメールらしいから、一応ウィルスチェックはしておこう。

送信者

narasaki

宛先

murai

件名

緊急!

本文

奈良崎だ、今出張先だからフリーメールで送る。
あのソフト、やっぱり手をひいた方がいい。
最初のパッチ云々は登録作業らしい。
その後、ソフト起動時の登録情報なんかから、
プレイヤーの身元を割り出すんだとか……。
噂は噂に過ぎないかも知れないけれど、
火のないところには煙はたたないって言うからな。

そうか、そうだよな。普通、住所が割れて物を送ってきた時点で手を引くんだろうな。僕はどこかで感覚が麻痺していたんだろうか。今まであれだけ送られてきた小包を見ても、「これは以前のオーナーが払った金だろう」なんて平然としてる方がどうかしてるんだろう。どうも、何か熱中するとしっかり物事を考えられなくなるみたいだ。

「っと、まず最初にするべきことは」

とりあえず未開封の小包は全部返却しよう。郵便局に持って行けば、きっと何か対応策が……。

「ああ、もうこんな時間だ」

ふと時計を見て気がつく、もうすぐ亜理紗と妻に会う時間じゃないか。小包の件は後回しにして、約束の場所へ向かわなくちゃ。

「……ひとつくらい、構わないよな」

小包の中からひとつ取り出して、小脇に抱えて家を出る。ひとつくらい、亜理紗にプレゼントしてやってもいいよな。緩みきった危機感と責任感が僕を包み、一人娘のところへ向かうことを優先させた。

僕が家を出た直後、メールソフトが新着メールの存在を告げた。

To Be Continued