1. monologue
  2. Other Stories
  3. 長い長い手紙
  4. 電話にて

長い長い手紙

  1. 休暇
  2. 名前のない手紙
  3. 覚えのない旧友
  4. どこかへ
  5. 恩師
  6. 休息
  7. 長い入院
  8. 緊急手術
  9. 祈り
  10. 集中治療室の彼女
  11. 再会
  12. 電話にて

電話にて

「あー、結局盆に帰省できなくてごめん」
「連絡もよこさないしね」
「……やっぱり怒ってる?」
「別に母さんは怒ってないわ。先方はどうだか知らないけど」
「先方?」
「お見合の先方! 相手!」
「……ああ、その話か。本当申し訳ない」
「母さんがどれほど苦労したと思ってるの?」
「そんなに怒らないでよ」
「断りの連絡もひとつよこさないから、会場まで手配して」
「会場? まさか、結婚式場の予約とか」
「何バカ言ってるのよ。お見合会場」
「ああ、今ちょっとヒヤッとしたよ」
「もったいないから母さん懐石料理食べてきちゃったわよ」
「棚からぼた餅だね」
「冗談言ってるんじゃないわよ。ああ、この子は全く」
「いいじゃないか、そんなに焦らなくても」
「いつになったら母さんを安心させてくれるのかしら」
「……だからって二十件も着信履歴残すなよ」
「音が出ないようにしてたんでしょ? 本当はもっとかけたわよ」
「保存最大件数が二十件だから、か。病院にいたんだから仕方ないだろ」
「病院? 病院で何してたの? ちょっと、怪我だったらどうして早く」
「ああ、違う、違うよ。僕じゃない。お見舞に行ってたんだよ」
「もう、お見舞なんかお見合の後でも……」
「ちょっと懐かしい友達でさ。久しぶりに会ったし」
「……もういいわ。母さん、あなたの結婚に口出しするのは諦めます」
「あれ、思ったより引き際がいいね」
「仕方ないでしょう、お見合よりお見舞の方が大事だって言うんだから」
「ああ、それは本当申し訳ない」
「……来年は、せめて帰省くらいしなさいね」
「ああ、お土産つきで帰省するかもよ」
「あら珍しい、何を持って帰ってきてくれるのかしら?」
「未来のお嫁さん」

The End.