山羊の歌

中原中也

雪の宵

靑いソフトに降る雪は / 過ぎしその手か囁きか   白 秋

ホテルの屋根に降る雪は / 過ぎしその手か、囁きか

ふかふか煙突けむ吐いて、 / 赤い火の粉も刎ね上る。

今夜み空はまつ暗で、 / 暗い空から降る雪は……

ほんに別れたあのをんな、 / いまごろどうしてゐるのやら。

ほんにわかれたあのをんな、 / いまに歸つてくるのやら

徐かに私は酒のんで / 悔と悔とに身もそぞろ。

しづかにしづかに酒のんで / いとしおもひにそそらるる……

ホテルの屋根に降る雪は / 過ぎしその手か、囁きか

ふかふか煙突けむ吐いて / 赤い火の粉も刎ね上る。

目次

山羊の歌

  1. 初期詩篇
  2. 少年時
  3. みちこ
  4. 羊の歌

  1. 修羅街輓歌
  2. 雪の宵
  3. 生ひ立ちの歌
  4. 時こそ今は……

このファイルについて

底本
中原中也「中原中也全集 第 1 巻」角川書店
1967 年 10 月 20 日 初版發行
1967 年 11 月 30 日 三版發行
中原中也「中原中也全集 第 2 巻」角川書店
1967 年 11 月 20 日 印刷發行
入力
イソムラ
2004-03-31T16:50:45+09:00 公開
2010-02-19T12:05:00+09:00 追加・修正
概要
底本を元に HTML 形式への変換を行っています。XHTML 1.1 と CSS 2 を使用しています。
ひらがな・カタカナなど基本的に底本のまま入力していますが(末黑野、未刊詩篇のカタカナ繰り返し記号 (*) を除く)、漢字はMS Pゴシック(MS PGothic)及びMS P明朝(MS PMincho)に含まれていないものはいわゆる新字に変換しています。

http://www.junkwork.net/txt