monologue : Other Stories.

Other Stories

機械の命 : 3/7

「ありがとうおじいちゃん!」

ハジメは僕を見て飛び跳ねた。一通り僕の周りをぐるっと回ると、今度は僕に飛びついた。僕はそれを慌てて支え、ハジメが直立できる姿勢に立て直した。

「よろしく、アールディ。僕は君のお兄さんで、君の親友だ」
「よろしくハジメ。僕は君の弟で、君の親友だ」

僕がそう言うと、ハジメは少し不思議な顔をしてから笑った。

「おじいちゃん、アールディが僕の真似をするよ。おかしいや」
「何もおかしくなんかないさ。RD はお前と一緒に成長するんだから」
「……? どういうこと?」
「RD は学習する機能があるんだ。お前がいろんなことを教えればどんどん覚える」
「へーそれはすごいね! よしアールディ、僕の部屋に来いよ!」

その機能のことを理解したのかどうかはわからなかったが、ハジメはとても驚いた表情を見せた。そして彼は、僕を彼の部屋に連れて行ってくれた。

「僕が毎日いろんなことを教えてやるからな。じゃあまず、今日のことから教えてあげるよ」

ハジメは、彼の学校で使っている社会科の教科書を取り出した。厚さが 12mm 程度の電子本のようで、背表紙に "Social Studies" と書いてあった。

「今日は西暦 2045 年、三月十六日。東歴だと 37 年」
「西暦 2045 年、東歴 37 年」
「そう。西暦はキリスト教の時間で、東歴は日本の時間なんだ。基準の年が違うんだよ」
「基準の年が違う。西暦に比べて東歴はすごく短い……んだよ」

僕がそう言うと、ハジメは嬉しそうな声で笑った。

「アールディ、君の日本語は何か変だよ」
「ハジメ、僕の日本語が何か変だよ。もっと教えて欲しい」

それを聞くとハジメはまた笑って、今度は日本語の教科書を持ち出した。

「じゃあ今日は日本語をしっかり覚えてくれよ。そうすれば、明日から僕が苦労しないですむから」

そう言いながらも楽しそうな表情で、ハジメは僕に日本語の教科書を差し出した。窓の外の太陽は地平線に近付いていて、今日はもう終わろうとしているところだった。

To be continued

Information

Copyright © 2001-2014 Isomura, All rights reserved.