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カウントゲーム

  1. ゲーム開始
  2. 発見
  3. 68
  4. 気付いたときには
  5. 転送
  6. 消去不可
  7. 試み
  8. 悪く思わないで
  9. 救いの手
  10. 君のための努力
  11. 打開策
  12. 要求
  13. 勝利の代償
  14. 簡単なこと
  15. ゲームオーバー

救いの手

Day 3, AM 8:15 Chapter 3: 菱田 優子

「ねぇ、どうかしたの? 顔色悪いよ」
「ううん、何でもない」
「優子、体弱いんだから、あまり無理しちゃだめだよ」

クラスメートの優しい言葉は何の力にもならなくて、ただ右から左へとまっすぐに突き抜けて、不安でいっぱいになった心を逆撫でしていくようだった。もうすぐ朝礼が始まる。

『……ガ……ッ、おはようございます、皆さん』

安物のマイクを何度か叩いて様子を見てから、校長が笑顔で話し始めた。優子の通う高校では、毎週月曜日の朝に定期朝礼が行われる。毎週毎週校長が一字一句変わらない挨拶で始める。十五分ほどの、有意義とは正反対の位置にある時間。

優子は落ち着かない様子で列に並んでいた。斜め前の男子生徒へしきりに視線を送る。彼なら何かできるかも知れない、そう心の中でつぶやきながら。

『それでは、今週も勉学に励んで、一生懸命頑張りましょう』

六十歳目前のずる賢い大人は、あんな無邪気な笑顔を意図せずにはできないだろう。彼女は毎週、校長の笑顔を見てそう毒づく。誰に言うわけでもないが。

「各クラス、教室で一時間目まで待機」

学年主任の低い声が指示を出す。朝礼の行われる体育館から、教室へと戻る人の波。その波をかきわけて、優子は一人の男子生徒の方へ歩いていく。

「ごめ、ちょっと通してっ……ねぇっ、深田君」
「菱田。何?」

呼び止められた男子生徒……深田と呼ばれた彼は、大して驚いた顔もせずに振り向いて言った。彼の表情からは何の感情も読み取れない。

「その、ちょっと聞いて欲しい話があるんだけど」
「何? 俺じゃなきゃだめなこと?」
「うん、そう、多分、君じゃなきゃだめだと思う」

人の波が立ち止まって話す二人を避け、川に立てた杭が水の筋を分けるように、二人の立つ場所からいくつかの流れができていく。

優子が人目を気にするような様子で、それまでより小さな声で言った。

「その、ゲーム……のことなんだけど」

その言葉を聞いて、深田の目付きが鋭くなる。優子は一瞬、自分は選択を誤ったのかも知れない、とそんな気になった。

To Be Continued