monologue : Other Stories.

Other Stories

音信

雪が降る頃にはじまった
誰も認めない関係でした

お互いを信じあっていても
決して削りあわない関係でした

誰がいくら渋い顔をしても
全く気にかけない二人でした
誰もが後ろ指をさしても
全く気にかけない二人でした

雪が積もる頃に発展した
誰も喜ばない関係でした

お互いを求めあっていても
無闇に与えあうことのない関係でした

誰がいくら不思議がっても
全く気にかけない僕でした
世間ではその関係を不純とか
あるいは君の火遊びだとか

君以外に何も見えませんでした
君以外に何も要りませんでした
若い僕の、とてもとてもささやかな
とてもとても残酷な要求でした

雪が溶けて春が近付き
一緒に君もいなくなりました

以前から付き合っていた恋人と
何やら画策したようで
僕の知らないうちに、まるで魔法のように
君は消えていなくなりました

僕は夢から覚めないまま
どうやら独り取り残されたようで
そんな簡単なことに気付くのに
ずいぶんと時間を要しました

あれから何年か経ちます
君がどこにいるのかはわかりませんが
風の噂に聞きました

「幸せそうだが後悔している」

本当か嘘かなど
僕の知るところではありません
何を後悔しているのか
僕の知るところではありません

ただ祈るのみです

どうかお元気で
どうかお幸せに

Fin.

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