山羊の歌

中原中也

みちこ

更くる夜

内海誓一郎に

毎晩々々、夜が更けると、近所の湯屋の / 水汲む音がきこえます。 / 流された殘り湯が湯氣となつて立ち、 / 昔ながらの眞つ黑い武藏野の夜です。 / おつとり霧も立罩めて / その上に月が明るみます、 / と、犬の遠吠がします。

その頃です、僕が圍爐裏の前で、 / あえかな夢をみますのは。 / 隨分……今では損はれてはゐるものの / 今でもやさしい心があつて、 / こんな晩ではそれが徐かに呟きだすのを、 / 感謝にみちて聽きいるのです、 / 感謝にみちて聽きいるのです。

目次

山羊の歌

  1. 初期詩篇
  2. 少年時
  3. みちこ
  4. 羊の歌

みちこ

  1. みちこ
  2. 汚れつちまつた悲しみに……
  3. 無 題
  4. 更くる夜
  5. つみびとの歌

このファイルについて

底本
中原中也「中原中也全集 第 1 巻」角川書店
1967 年 10 月 20 日 初版發行
1967 年 11 月 30 日 三版發行
中原中也「中原中也全集 第 2 巻」角川書店
1967 年 11 月 20 日 印刷發行
入力
イソムラ
2004-03-31T16:50:45+09:00 公開
2010-02-19T12:05:00+09:00 追加・修正
概要
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